獄ツナ
□始まりは、あの桜の木から
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「よ、獄寺! 今日さ、一緒に宿題やらねぇ?」
学校の昼休み。同級生の武に言われたこの珍しい一言に隼人は一瞬動きを止めた。
武が宿題のことを気にするのは珍しい。
「別にいーけど、学校でやるのか?」
「あー、そうだなぁ。あ、獄寺んちはダメか?」
「………別にいいけど」
ふと思考を巡らせれば今日は彼の休みだと思い出す。
「今日、―――父さんもいるけど」
「あぁ、別に気にしねーぜ! っていうか話してみたいんだよな、獄寺の父さん」
明るく言う彼には微塵も下心などない。いや、普通ならないだろう。
隼人は今からあの義父が本当に無邪気に喜ぶ姿を想像し、今から嫌気が差した。
チャイムが鳴り響く。それを聞いて隼人はこっそり机の下で携帯を握った。
部屋の掃除をしながら彼は今日の献立を考えていた。ふと時計を見やればもう二時近い。掃除機を片してリビングへと戻る。
「買い物行かなきゃか」
冷蔵庫の中を確認して呟き、財布を持つ。
「ん?」
ふと机の上の携帯にランプが灯っていることに気付いて開いた。休日にメールと考えるともしかしたらあの口うるさい秘書かもしれない。
そう思うとゲンナリした。
しかし、実際はそうではなくて、学校に行っているはずの義息子だった。
「………あぁ、友達が来るのか」
それなら材料多めに買うべきかな。
隼人がこの家に友達を呼ぶのは初めてだ。少し嬉しくて綱吉は頬を緩めた。