獄ツナ

□桜の木に見守られて
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ひらひらと舞う桜の花びらが好きだった。
だけど、あれから俺は…。










「よ、獄寺!」


登校時に声をかけられた。振り返ればそこには同じクラスで隣りの席の山本武がいた。毎日毎日変わらない笑顔をする。
それが時に不思議だ。


「はよー。お前今日の宿題やってきたか?」

「うわ、忘れた! 見せてくれっ!」


間髪入れずに言われたそれに思わず笑う。毎回このやり取りだ。そろそろ自分でやれよ、とも思うが、山本とのこのやり取りは嫌いじゃない。


「仕方ねぇな。ジュース奢れよ」

「りょーかい」


高校に上がってからまだ間もない。
教室から外を見ると既に桜は散り切っていた。その事実が俺には安心するもので、この季節が俺は苦手だ。


「獄寺、今日放課後にどっか行かね?」

「お前部活は?」

「今日は久々に休みなんだ」


珍しい、とも思うが今日は都合が悪い。一応軽く悩みながらも、首を振った。


「わりぃ、俺今日用事あるから」

「家のことか?」

「あぁ」


そっか、と笑って許す。本当に気楽に付き合える奴。
それにこいつは俺が家のことで用事がある時は絶対に無理だということも理解している。





 
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