獄ツナ

□二人で
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いつからだろう、君の存在が隣りにあるのが…当たり前だと思い始めたのは。





生暖かい風が頬を撫でる。まだ五月前だと言うのに妙に暖かいな、と彼…沢田綱吉は思った。
日直の仕事を終えて開けられた窓から外を見やれば、既に空は茜色に染まっている。
別に部活も入っていないためすぐに家に帰ろうと教室に戻る。


「あ、お疲れ様です」


当然のように待っていた銀髪の彼、獄寺隼人に綱吉は苦笑する。


「うん、帰ろっか。お腹すいたし」

「はい」


鞄を肩にかけて教室を出る。茜色の陽により、紅く染まりながら二人は歩いた。
隣りを歩く隼人を盗み見ながら綱吉は俯いた。



いつからだろう、それだけじゃ物足りなくなったのは。



「10代目?」

「わぁ!」


不安そうに覗き込んで来た隼人に綱吉は驚愕して後ろに下がる。同時に足を絡ませて尻餅をついた。


「じゅ、10代目! 大丈夫っすか!」

「あ、うん。大丈夫」


差し出された手を掴んで立ち上がる。思ったよりも軽い綱吉の体重に隼人は驚く。
まだ中学生とはいえ、彼は他の人達よりも小柄でひょろい。


すっげー、抱き締めたい。


闘う時の彼は目が引かれるほど強く、かっこいい。けれど、普段は誰よりも弱々しく、つい守りたくなる。


「獄寺君?」


いつまでも動かない隼人に不思議に思って首を傾げる。はっとして掴んだままの手を慌てて放した。


「す、す、すいません。何か気分でも悪いと思って余計な心配を!」

「わぁ! 土下座しなくていいから!」


今にも頭を打ち付けそうな所を慌てて止めて綱吉は溜め息をついた。彼はいつも大袈裟だ。自分を慕ってくれているのはいいが、そこまでやられると苦しい。
同じ年で、同じクラスにいるのだから、もう少し砕けた関係になりたい。そう、思ってしまう。


友達なのに。


彼は綱吉を10代目として慕ってくれる。けれど、それはボンゴレのボス候補だからで、綱吉だからではない。その事実が時に苦しくなる。


 
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