もらい物と捧げ物とコラボ物
□満たされて
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今僕は、柄にもないことをしてる。
どたどたと勢いよく走り、綱吉は理科室の机の下に隠れた。刹那、開かれるドアに息を殺す。
「ねぇ! ………いない。はぁ、いつになったら―――」
がらがらとドアを閉めて去り行く彼に安堵して綱吉は頭を抱えた。
並盛最強の風紀委員長の雲雀恭弥に告白されてから既に三日。彼は毎日のように綱吉を追う。彼が恐いだけの綱吉にとってそれは地獄のような日々だった。
「はぁ」
応接室に戻った恭弥は書類を意味なく見つめて溜め息をつく。一つのものに執着することは彼にとっては珍しい。
しかも、その対象は人間の男で、恋愛感情を持つ。自分自身でもそんな経験をするとは思わなかった。
「どうしたら、振り向くんだろ」
肩に乗る黄色い小鳥を指で撫でながら呟く。今まで人に好まれようと思ったことのない恭弥にとって、それはかなりの難問だった。
桜舞うその場所で、君は笑う。
『雲雀さん』
僕を見つけて笑う。それだけで胸が弾む。
『俺、やっぱり雲雀さんが好きです! 付き合って下さい』
あぁ、やっぱり………。
何て幸せな夢だろう。
気付けば見慣れた自室の天井が視界に入っていた。まだ外は真っ暗で、夜明けにも程遠い時間だった。
願望が夢となったのだと、恭弥は苦笑した。こんな女々しいことまで起きた。そんなまで彼が欲しいのか。
「いつになったら、君は………」
本当にそんな風に僕を求めてくれるのだろうか。
振り返らなくても、はらりはらりと積もる気持ち。どんなに迫っても、まだ靡かない。
「あ!」
パスされたボールを見事に取り損ねて、綱吉は立ち止まる。
授業は体育。種目は野球。人数的に女子も含めて二チームで行っていた。
「たく、ダメツナ! 早く取ってこいよ!」
「わ、わかってるよ」
慌ててボールを追いかけて走る。校舎の方まで転がった白い小さなボールを見つけてほっとし、拾った。
「―――うわっ!」
身体を起こすといつの間にいたのか、学ランをまとう支配者、恭弥がいた。
「ひ、ひ、雲雀さん!」
「体育?」
「は、はい」
びくびくと身体を震わせる彼に恭弥は眉を寄せた。それに彼が怒ったのだと綱吉は勘違いする。
「早く行けば? 待ってるよ」
「あ、はい」
あっけない言葉に綱吉は瞬きをして、チームの方に歩き出した。