もらい物と捧げ物とコラボ物

□足りない ※
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夕焼け色に染まる応接室。
普段なら巡回に出るこの時間に、恭弥はまだここにいた。


「ん、―――ふっ」


息の抜けた声が小さく響く。すっぽりと彼の身体に包まれているのは柔らかくはねたブラウンの髪をした少年。


「はぁ……」

「綱吉…」


愛しそうに名前を呼ばれて綱吉は微笑む。眩しいくらいのその笑みに恭弥はもう一度手を延ばそうとした。


「あ、もうこんな暗くなってる! すいません、雲雀さん。もう帰ります!」


がばりとソファから立ち上がって綱吉は扉を開ける。最後に一礼するとリボーンに殺される! 等と叫びながら走り去ってしまった。
茫然と出した手をそのままにしている恭弥はゆっくりと身体を直して、溜め息をついた。


足りない。


ムスッと不機嫌そうに心の中で呟いた。


足りない。足りない。足りない。



君が足りない。



まだ付き合ってから一ヶ月もたたない。だけど、彼はもっと綱吉と一緒にいたい。
もっと触れていたい。


「………欲しい」


ぽつりと漏れたそれはずっと前からの願望だった。





『沢田綱吉………』


告白は


『君が……好きなんだ』


僕からだった。
最初はわからなかったこの気持ち。
いつからだっただろう。
いつからか何処にいても群れていても、君だけは見つけられた。

イライラした。
ムカムカした。

君があの周りの奴等に甘い笑顔を向ける度に。


その度に、それを僕の物だけにしたくて仕方なかった。


『雲雀さん』


あの時、何度も何度も追いかけて、捕まえて、僕の苦しいくらいの君への想いをぶつけた後。
やっと応えてくれたその笑顔に、身体が痺れた。


『俺……も、大好きです』


好きだ。好きだ。
君が好き。


これで君は僕のもの。
それなのにまた募るのは絶え間なく溢れる君への愛。
まだまだ君といたくて、まだまだ君を感じたくて、まだまだ君が、足りない。

足りないんだ。

君を愛して、愛して、メチャクチャにしてやりたい。
乱して、泣かせて、啼かせて、僕だけしか見れないその顔を暴いてやりたい。





『ぁ、―――ん、はっ、ひば……りさん』





「―――――っ!!」


かっと、目を勢いよく開けて恭弥は飛び起きた。息を乱している自分の身体がかなり熱を持っていることに気付き、舌打ちする。
これで何度目か。
願望が夢となり恭弥を襲う。いつもいつもあの綱吉に悩まされて、急かされて、我を忘れそうになる。


あぁ、君が足りない。





 
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