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□2010.3 ヒバツナ
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【取引】
革の靴で歩けば地下の建物内のここでは妙に響く。あまり入らない連結扉を潜った。
暫くすれば、こんな場所には似合わない和風な部屋の扉に辿り着く。
「失礼します」
彼は迷わずに入れば、目前な飛んで来たトンファーを咄嗟に受け止める。
肩を竦めて歩みを進める。
「突然何するんですか?」
「連絡も無しに入るからだよ」
少し不機嫌そうな彼に苦笑をして、綱吉は少し離れた所に座った。じっと目を見つめて、ゆっくりと頭を下げた。
「雲雀さんにお願いしたいことがあります」
「……何?」
「近い内に10年前の俺達と今の俺達が入れ替わります」
告白された内容に、恭弥も眉を寄せる。その一言でやることは決まっている。
ミルフィオーレに突撃するのだろう。
「で、それで?」
「入れ替わる前に俺は死にます」
「―――!!」
「と、言っても仮死状態ですが。そろそろボンゴレ狩りも本格的になってくる頃です。入れ替わる順番はそれぞれ違います。そこで、雲雀さんには10年前の俺の家庭教師になってもらいませんか?」
普通なら簡単に了承出来ない内容。だが、彼は雲。誰にも理解出来ず、予想出来ない。
にやり、と笑って恭弥は脇に置かれた冷酒を飲む。
「いいよ、だけど条件がある」
静かに紡がれたそれに綱吉は驚く。条件のことではなく、彼が簡単に頷いたことにだ。
気が変わってはいけないので、すぐに笑って何ですか? と聞た。
「そうだね、全てが終わったら……君でももらおうか?」
さらりと紡がれたそれに綱吉は目を見開いた。それはどう受け取ればいいのだろうか。
「あの…、」
「まぁ、無事に帰ってきたらわかるよ」
そう言われて投げられた笑顔は今までにないくらい穏やかで、綺麗だった。
「はい、じゃぁ……楽しみにしてますよ」
どっちであっても、構わない。
ただ、貴方に少しでも近付けるなら。
互いの奥深くにある気持ちはまだ紡ぐことなく、二人はそのまま計画を決行した。