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□2010.2 ムクツナ
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【ありえないこと】
「見つけましたよ、綱吉君」
ある日の、ある昼下がり、並盛中学校に堂々と訪れた骸は、屋上にいた綱吉を見つけて走ってきた。何が見つけたなんだろうか。何も隠れてなどいないのに。と思いながらも、綱吉は骸を見やる。
「綱吉君、今日は制服デートをしましょう!」
「ふざけんな、帰れ」
「な、何でですか! 学生の恋人といったら、これでしょう?」
あぁ、イライラする。何でこいつはそうなんだ。
綱吉は溜め息をつきながら視線を逸らした。今は昼休み、ご飯も食べたのですることはない。昼寝でもしようとしていた所に骸が来た。
「あのさ、俺寝たいの。帰って」
「な、じゃぁ僕の膝枕でどうぞ」
「うわ、キモイ。やめろよ」
本気で嫌そうな顔をする彼にショックを受けて骸は隅で丸くなった。一体何を考えてるのか、綱吉にはわからない。
大体、いつ恋人になったのか…。
「お前、最近そうやって何かと俺をデートに誘うけど、何がしたいの」
「そんなの、デートに決まってるでしょう!」
「何で、男とデートしなきゃなんだよ」
面倒そうに呟く。大体骸は元々綱吉の敵で、守護者も条件付で仕方なくなったもの。それなのに何故こんなにも自分に懐いてるのかわからない。
「綱吉君」
いつの間にかすぐそこにいた骸に驚いて、綱吉は後ずさる。だけど、フェンスにぶつかって、追い込まれる。
理解できない状況に綱吉は骸を見つめるしかない。
「な、何だよ?」
「デートとは、好きな人とするものでしょう? なら、男でも関係ないんですよ」
意味ありげな言葉と、触れ方に綱吉は息を飲んだ。
ありえない。
こいつが俺を好きなことも、俺がこいつに翻弄されてることも。
「それに、僕は君に…求められたいんです」
「俺に?」
「はい。僕ばっかり愛情表現してたら、不公平でしょう?」
何を言ってるんだ。馬鹿かこいつは。
大体俺達は付き合ってない。
「い、いいから帰れよ!」
「……、仕方ないですね。今日は帰ります」
あっさりと諦めて骸は学校から去った。未だに胸がドキドキしているのを誤魔化すように首を振って、息をついた。
ありえない。俺があいつを求めるなんて。
「絶対ない」
そう呟いて綱吉はチャイムと共に教室に戻った。