拍手感謝小説倉庫

□2009.9 獄ツナ
1ページ/4ページ




【君は馬鹿…】





残暑が続く九月。夏休みも終わり、また学校が始まった。いつものように三人でご飯を食べる三人は、それでも屋上に出ていた。日陰の場所を何とか探し出し、お弁当と買ったパンをその場に広げる。


「あのさ、ちょっと思ったんだけど」


ふと、その姿を見た綱吉は思わず口を開く。もちろん、二人はその先の言葉を待った。


「山本は家ではそれなりの食事を取ってるだろうけど、獄寺君て家でもそんな食事なの?」

「あ、いや…それは。自分でちゃんと」

「確か、この前まで厨房に入ったことないって」

「うっ!」


的確な突っ込みに隼人は何も言えない。図星だと気付いて、綱吉は思わず溜め息をついた。その様子に武は牛乳を飲みながら、見守っている。


「……せめて一食くらいは」

「いや、そんなお気になさらないで下さい。これでも幼い頃は毎日のように姉貴の料理を食べていたくらいですし」

「関係ないだろ。食生活はちゃんとしないと、確実に将来困るよ?」

「は、そうですね。俺に何かあったら貴方を支えられなっ───」

「何の話だよっ!」


暴走気味の隼人の台詞に綱吉まで顔を赤くした。そんなバカップルの様子を落ち着いた表情で見守っていた武は、飲み終わった牛乳のパックを潰しながら、ある一つの提案をした。


「じゃぁさ、ツナが弁当作ってやれば?」

「は?」

「なっ、何言ってんだてめー!」

「いいじゃん、ツナもいい花嫁修業だろ?」

「だから、何か違うから! 大体、俺女じゃないよ?」


はは、そんなの関係ないだろ。と流石の山本節に綱吉は何も言えない。ふと、隼人の方を見れば、満更でもない表情でこちらを見ていた。期待してる、と瞬時に判断した。
確かに付き合いはしてる。自分が受けの立場なら嫁といわれても仕方ないのかもしれない。
しかも、今回この話を持ち出したのは自分自身だ。


「じゃぁ、明日一応作ってくるよ」

「い、いいんですか?」

「何かそんな流れだし、母さんに言えば教えてもらえるし」


思わぬ状況に隼人はガッツポーズを密かにして、感動を噛みしめた。そして、珍しく武に感謝の言葉を心の中で呟いたのだった。





そして翌日。綱吉は約束通り弁当を持ってきた。少し大きめな弁当箱に入っている綱吉の料理に感激して、隼人は大げさにも涙を流した。その姿に苦笑しながら、早く食べようよ、と座り込む。初めて弁当を作ったにしては綺麗なそれに隼人は勿体無いと思いながらも箸をつける。


「ど、どう?」

「美味しいっす! マジ、天才です10代目」


本当大げさだなぁっと思いながらも、予想以上に喜んで弁当をかきこむ隼人に微笑んだ。こんなに喜ぶのなら毎日作ってもいいかもしれない。
こうして、綱吉は毎朝らしくなく早起きをし、二人分の弁当を作るようになった。





 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ