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□2009.6 ムクツナ
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【小さな骸】





何故、こんなことになったのだろう。


綱吉は溜め息をつきながら自分の部屋の隅にちょこんと座っている彼をみた。
藍色の髪を後ろで葉っぱみたくまとめている小さな男の子。どうやったらそんな分け目にできるのか、ギザキザしてるそれは確かにあの霧の守護者の特徴だ。
ただ、違うのは大きさと右目。


「おーい、骸くぅん」

「………」


無言な彼にまた溜め息をついた。
きっかけはランボの10年バズーカの故障と誤射。そこに何故か丁度訪れた骸に命中したのだ。


「ここ…何処ですか?」

「え、あ、俺の家だよ」

「貴方……誰ですか?」


うっわ!


少し泣きそうな顔をした彼はあの六道骸とは思えない。


「俺沢田綱吉! あ、そうだお腹すかない? チョコレートならあるけど食べる?」

「! 食べる!」


ぱっと顔を輝かせてチビ骸は綱吉に駆け寄る。その姿に感動を覚えながらもビスケット付きのチョコレートを手渡した。


「僕ね、チョコレート大好きなんです」


嬉しそうに食べる骸の頭を撫でながら、綱吉は肩を震わせた。


か、可愛い。


骸にもこんな時があったのだと嬉しく思った。子供と入れ替わって聞いた言葉遣いは今と変わらず、髪型も変わらず、もしかしたら右目をつけられる前までも誰かを憎むことしか知らないのだと、不安に思ってしまった。


「美味しかったです! ありがとうございます」

「あ、ううん」


すっかり懐かれてしまい、チビ骸は短い腕で綱吉に抱き付く。小さなその身体を純粋に愛しく思い、抱き返してやる。


あったかい……


安心する綱吉の腕に目を閉じた。


ぽん


「わっ!」


瞬間、煙が噴き出して、綱吉の身体を抱き締めていた力も変わる。
チビ骸は元の骸と入れ替わり、綱吉の小柄な身体をすっぽりと包み込んでいた。


「む、骸?」

「君、本当に男ですか?」


低く、耳に馴染むその声に何故か顔が熱くなった。


「わ、悪かったな! 筋肉なくて!」

「別にそうとは言ってませんが…」

「骸なんか、性格に似合わずチョコレート好きなくせに!」

「な、何で知ってるんですか!」

「は、ってか放せよ!」

「嫌です。ちょっと……癒して下さい」


少しだけ暗い声音は、彼が何か嫌なことを体験した証拠。子供の骸と入れ替わった。ということは彼にとって嫌な場所に飛んでしまったことに綱吉は気付いた。


「お前だけが……悪い訳じゃないからな」

「何ですか? いきなり」

「いや、独り言」


互いの温もりに安心して、二人はしばらくそのままでいた。


密かに生まれた想いに気付くのはもう少し後のこと。





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