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□2010.10 獄ツナ
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【本当の出会い】





場所はイタリア。
人々が集まる街中に事件は起こった。


「動くな! 見てわからねーのか!」


誰もが息を飲んで彼を見つめる。ナイフを振り回しながら声を張り上げるは帽子をかぶった男。彼は近くにいた少年を人質に逃げ道を探している。


「くそ、どけ!」

「おやおや、どこに行くつもりかな?」


そんな彼に勇敢にも近付いた者がいた。涼やかな顔をしてゆっくりと近付くのは金髪の髪をした男。まだ20代くらいの彼はナイフを振り回す彼にちょっと驚いた反応を示すだけだ。


「何だオメーは!」

「それはこちらのセリフだよ。盗みを働いておきながら少年人質に逃げるなんてかっこ悪いな。観念して捕まってもらえるか?」

「ふざけるな!」


思い切りナイフを振り上げた彼に、男は笑う。大きく出来た隙を狙って懐に入り込むと、そのまま脇腹に肘を入れた。
当然むせ込んで、よろめく。その瞬間に少年を彼から奪い取り、今度は腹に蹴りを入れる。


「ぐはっ!」

「何だ、意外にもあっけないな。私は一応警察というものだ。お前は一応拘束させてもらうぞ」


懐から手錠を出して、彼…ジョットは男を逮捕した。
その姿を人質になっていた少年は茫然を見つめて、目を輝かせた。


「お、大丈夫か? 少年」

「はい! ありがとうございます! あの、あの、お名前聞いてもいいですか!」

「私はジョットだ。無事で何よりだ。所でお前両親は…」


彼の両親らしき人物を探すために周囲を見渡す。しかし、少年の答えを聞く前に、ジョットの目の前から彼が消え去った。
瞬きをして視線を移せば、捕まえた男と同じ格好をした者が、また彼を抱えて走り去っている。


「しまった…」


助けたはずの少年を、また違う犯人に捕われてしまった。これはかなりの責任問題な上に、今度こそ少年の命が危ない。


「仕方ない。本当は非番の日なんだがな」


ちらりと後ろを見れば、一緒に来ていたはずの息子の姿を見当たらない。またどこかで転んだりして泣いているかもしれない。そう思いながらも、仕方なく彼はそこから離れた。





 
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