ムクツナ
□君に嵌められた僕
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沢田綱吉と会ってから五年。
薄暗い部屋の中に彼は入る。あの時とは比べ物にならない程快適で、それでも豪華な部屋に躊躇う様子などない。
慣れた様子で端に置かれたソファに腰掛ける。身体を受け入れるクッションのきいたそれは、このマフィアと男の位の高さを物語っていた。
彼、六道骸はボンゴレの霧の守護者だ。そう決まったのは五年前。だけど、そんなものに最初から興味などないし、むしろマフィアになることに嫌悪していた。
それでもまだここにいることが不思議でならない。
「そろそろボンゴレを乗っとりましょうかね」
ぽつりと呟いた言葉に苦笑する。そんなこと言う前に早く行動すべきだろう。
白い空間に僕はいた。
またいつもの夢だと深く考えずに思う。
意味なく歩いていけば、パシャッと水音が響く。
下を見やれば真っ赤な血がそこに広がる。
あぁ、何て不愉快な夢…。
「骸!」
「―――!」
強く叩かれた衝撃で骸は目を覚ました。一瞬理解出来ずにいたが、目の前にいる男を見て状況を把握し、溜め息をついた。
「また、ですか」
「何がだよ」
「いつもいつも、よくも飽きずに来ますね」
彼の目の前にいるのはボンゴレのボス、沢田綱吉。骸のターゲットである彼は骸の部屋のカーテンを開けた。
マフィアとして生活をし始めてから、骸には気付いた点がいくつかある。
一つは、綱吉が彼の想像を超えるくらい世話好きだと言うこと。
「お前またソファなんかで寝て! いいベッドあるんだからちゃんと寝ろよ!」
「そんなの僕の勝手です」
「はぁ。ほら、朝ご飯持って来たから食べよ」
カチャカチャとテーブルにパンと目玉焼きとコーヒーというオーソドックスな朝食を並べる綱吉に、骸はまた溜め息をついた。
「いりません」
「毒なんて入ってねぇよ」
「別にそんなこと思ってませんよ」
「なら食えよ。ほら、一日の活力は朝からだぞ!」
これ以上反論してもうるさいだけなので、骸は仕方なくイスに座る。一口食べれば程よい塩気が口に広がった。
意外にも、美味しい。
ちらりと綱吉を見れば、ちゃっかり彼もそこで一緒に食べていた。
マフィアになって半年。彼は毎日これを繰り返していた。