ムクツナ
□君だけの王子様 *
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僕の意思など関係ない、気持ちのない付き合い。
あぁ、どうして僕が。
約束の時間の十分前。今日も遅刻は無しだ。だけど、僕がこの時間に来ても、貴女はまだ来ない。約束の時間を十分過ぎて、やっと現れる。待たせているのが当然だと、そんな顔で。
別に気にすることじゃない。こんなやり取りはもう何回もした。
彼女よりも面倒な相手を何人も知っている。だから、まだいい方だ。
「ご機嫌よう」
気持ちなどない、ただの婚約者。それでも貴女は律儀に僕と約束をする。毎回毎回、次に会う約束をする。
そして、今日もまた。
「おはようございます、お姫様」
慣れた手つきで彼女の手の甲にキスを送る。普通ならこんなことしないだろう。普通なら、照れるか引くかどちらかだろう。だけど、貴女は本当に当たり前のように微笑んでいる。
何処か他の人とは違う。
何処か気になる貴女。
「今日は柔らかい色調のお洋服なのですね。とても、貴女にお似合いです」
「当たり前よ」
髪型を誉める、服を誉める、彼女を誉める。それは最初から決められていた彼女のルール。だから従う。彼女は世界一のお姫様。そういうルール。
髪型も、服も彼女に似合って当然だ。見立ての者が選び、お付の者が仕上げるのだから。