ムクツナ
□憂鬱が何かに変わる時
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「……………?」
だけど、予想に反して何の反応もない骸に思わず振り返れば、いつの間にか立ち止まって俯いていた。
「骸?」
まさか、このくらいで傷付いたのか、と不安になる。軽く近付いて顔を覗くと突然骸は顔を上げて声を荒げた。
「僕の前で他の男の名前言うなんて酷いです!」
「はぁ? 訳わかんねぇし!」
「君は僕だけ見てればいいんです!」
ギャーギャーとおもちゃをせがむ子供みたいに喧しい。面倒になって置いて行こうと決意し、背中を向けた。
だけど、身体は前に行かず、腰に感じた力で後ろに傾いた。背中に衝撃が伝わるとやっと骸に抱き締められていることがわかる。
「な、何するんだよ!」
「あぁ、綱吉君の香りがします!」
「きもっ、ちょ、やめろ!」
首筋に鼻を押しつけられ匂いを嗅がれる。いや、マジでキモい。もう近寄んなよ、消えろ、マジ殺っていい?
らしくない思考に襲われながらも耐えると、生暖かいぬめった感触が首筋に滑る。
「ひゃあ!」
「か、可愛い! 綱吉君!」
ギュッと抱き締める力が強まる。俺はやっとやられたことを理解して、何かがキレる。