獄ツナ

□カウントダウン
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3 【あらめよう】





最近、俺はおかしい。


さわさわと涼しい風を頬に受けながら、綱吉は弁当を食べる。ちらりと向かいの人物に視線を向ければ、彼はにかっと笑った。
何故か照れくさくて視線を弁当に戻す。軽く火照った頬は多分、残暑のせいだと言い聞かせて。


あぁ、やっぱりおかしい。


以前ならこんなことなかった。普通に接してたはず。何故、今更になってこんなことになっているのだろうか。
綱吉は悩み、それでもご飯を食べる。止まっていたら不審がられる。


いつからだったろう…。
視線が君に行くようになったのは。


夏も過ぎて、面倒臭い学校が始まった。毎朝、隼人が当然のように迎えに来る毎日がすごく久しぶりに思える。それでも隼人は夏休み中毎日といっていいほど綱吉の家に来ていた。けれど、朝からこうして来てもらうのは、やっぱり特別だと実感する。
久しぶりの学校。久しぶりの授業。全てが久しぶり。そんな風景の中で思わず目がいくのは、あの銀色の髪。さらさらとした気持ちよさそうなその髪が視界の中で揺れる。
休み時間の度に真っ先に来る。何かある度に同意を求める。時に変な勘違いで困らせて、大げさに褒める。


あぁ、最近獄寺君のことばっかりだ。


そんな日常を数日繰り返した。いつも、いつも、視線の先には彼がいる。何故なのか、綱吉にもわからない。だけど、薄々は感づいている。多分あれだ。でも、確実とは言えなくて、思いたくもなくて、気付かない振りをする。


「10代目? 何だかさっきからボーっとしてませんか?」

「え? いや、今日も平和だなぁっと思って」


そう、平和だ。
俺の心の中以外は。





風呂上がり、自分の部屋で一人綱吉は溜め息をつく。窓の外を見るときらきらと輝く星。ずっと、こんな空を見る余裕なんてなかった。特に最近は。


「リボーンが来てから、ずっとはちゃめちゃな生活を送ってたけど」


マフィアのボス候補だと言われ、獄寺君が来て、山本も巻き込んで、まさか雲雀さんもファミリーに入れて、ランボとか、お兄さんとか、クロームとか…。
本当に色々あった。


綱吉は自分の手を見る。あの時と変わらないように見えるそれは、だけど小さな傷をいくつもつけている。全てそれはあの頃からつけてきた。
あの時とは違う自分。それは実感できる。いつの間にか友達ができた。いつの間にか守りたい者ができた。いつの間にか、いつも側に誰かいた。


「変わったな。俺」


前はこんなに強くなかった。
前はこんなにかっこよくなかった。

だけど…。


「君はいつまでも変わらない」


いつまでも、側にいて、変わらぬ忠誠をくれる。





 
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