ヒバツナ
□願い事
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意外な提案に綱吉は目を丸くする。恭弥の願いを聞くというのは若干恐ろしくもあるが、これなら自分の願いも聞いてもらえる。
「雲雀さんがそれでいいなら!」
「うん。じゃぁ、君からね」
さらりと振られた。こんなにもあっさり言う機会を与えられると逆に対応に困るものだ。
綱吉は一瞬躊躇いながらも、意を決して口を開いた。
「名前、呼んでください」
ずっと気になっていた。付き合ってからも彼は"君"としか呼んでくれず、一度も名前で呼んでくれたことがなかった。
「じゃぁさ、君も名前で呼んでよ、綱吉」
「ふ、え!」
あっさり過ぎる程呼んでもらえた名前と、同時に言われたお願いに頭が混乱した。確かに彼も今まで恭弥のことを下の名前で呼んだことはなかった。
俺が、雲雀さんを?
名前で呼び合う姿など想像もできない。誰よりも強く、誰よりも他人のことを気にしない彼が自分のことを好きになっただけでも驚きなのに、恭弥は綱吉に自分の名前を呼んでもらいたいと願う。
「早く、綱吉」
「〜〜〜〜っ」
瞬間、綱吉は顔を真っ赤にして彼から視線を外した。心臓がバクバクと大きな音を出す。
こんなにも名前を呼ばれることが恥ずかしいとは思わなかった。