ヒバツナ
□願い事
2ページ/9ページ
人と一緒にいることを嫌うはずの彼は、何故か綱吉を好きになった。
そして、彼の戦略により綱吉も彼が好きになった。
「何、考えてるの?」
「いえ、別に」
「君、嘘下手だよね」
あ、まただ。
彼の言葉に少し目を細めて、綱吉は俯いた。不満、とまでは言わない。けれど、少し気になってしまうそれに最近落ち込みつつある。
「ねぇ、何でこんなに出る種目少ないの?」
「へ? あぁ、体育祭ですか? だって俺が出てもクラスに迷惑かかりますし」
歯切れ悪く返されたそれが気に入らなかったのか、大袈裟に溜め息をついた。
何かおかしいことを言ったのだろうか、と綱吉は首を傾げる。
「あの強さ、見せてやればいいのに」
「な、小言弾はそんなことに使えませんよ!」
辛いし!
「あの時の君は、本当に綺麗だと思うよ」
強いことを認めてくれるのは嬉しいが、何だかそう言われるのは癪だった。
綱吉は頬を膨らませてうなだれる。
「どーせ、普段の俺はダメダメですよ」
「………君以外の人間には、君の魅力に気付いてるのにね」
「それ、どんな魅力のことですか?」
「………そうだね、君が体育祭で一つでも僕に勝てたら教えてあげる」
突然の提案に綱吉は目を見開く。どんな条件だ、それは。既に死刑と言われているようなもんだ。そう思った。