ヒバツナ
□飴と恋
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一つ、一つ、溜まっていく飴。最初はもらった日に舐めていたけど、いつの日か勿体ない気がしてビンに貯めていくようになった。
甘い甘いものが溜まっていく。ビンにも……心にも……。
このやり取りが始まってから既に二週間がたった。もうビンにはいっぱいになり始めている。
「はい」
「………ありがとうございます。あの、俺以外にあげる人…いないんですか?」
「何で?」
「いえ、ただそんなにあるなら他の人にも渡していけば早く無くなるんじゃって」
そこまで言うと何故か雲雀さんは不機嫌そうに顔をしかめる。
「僕が君にあげたいだけだけど、文句あるの?」
「―――っ」
溜まる…
たまる…
あまずっぱいもの
「………俺は、」
ビンはもういっぱいで、蓋が閉まらなくて。
これを入れたら………
溢れてしまう。
「――――っ、これ以上……」
好きにさせないで下さい。
たまる
たまる
好きという
想い。
走った。短い足で、遅い足で、懸命に。
苦しい。酸素が足りなくて、胸が締め付けて、苦しい。
手には汗にまみれた一つの飴。あの人が俺に置いていく、痕跡。
嬉しくて
苦しくて
切なくて
だけど、叶うはずのない想い。
「好き………」
俺、雲雀さんが、好き―――。
涙を流しながら俺は押し潰されそうな痛みに耐えるしかなかった。