ヒバツナ
□飴と恋
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あれから雲雀さんとは会っていない。
というか、一人にならないようにした。ビンに入ったままの飴はそのままで、手もつけていない。
また、それが未練がましくて。
「ただいまー」
「ガハハハ! ランボさんのだもんね」
「♯‡¶※*&」
「何してんだよ、おま―――」
俺は思わず硬直する。廊下に散らばる包装紙。苺が散らばる小さな包み。
慌てて二階に上がる。空になったビンが床に無造作に転がっている。
「は、はは」
こうやって、無くなるんだ。
消えるんだ。この想いも……
もうどうでもよくなって、ただぼんやりとした日々が続く。
多分、もうないんだ。あの飴のようにとけて、消えてしまった。
ピンポンパンポーン
授業中に陽気な音がスピーカーが流れた。皆何だろうと耳を澄ませていると、聞こえてきた声に凍り付いた。
『沢田綱吉、今すぐ応接室に来るように。二度は言わないよ』
そう、恐怖の代名詞、雲雀さんの声だ。ざわざわと辺りはざわつき、俺をちらちらと見る。
「沢田…行ってきなさい」
「は、はい」
気が重い。長い廊下をゆっくりと歩いて一度立ち止まる。
消えた?
なくなった?
どうやって?
だって今でもこんなに苦しくて。
こんなにも甘い気持ちは溢れてる。
「無くなってなんか………ない」