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□2010.8 ムクツナ
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俺はどうしようかな。


お弁当を持っているが、食べる気にもなれずに綱吉は屋上に向かう。暖かい気候がすごく丁度よくて妙にうとうとした。
もうこのまま午後をさぼってしまおうと考えて、ゆっくりと目を閉じた。





またいない。


女子に聞かれた問題を教え終わった瞬間、骸は隣りにいたはずの綱吉が消えていることに気付いた。別に約束をしているわけではないが、彼と一緒にいることは幼い頃からの日常で、いないことに不安を覚える。
何処で何をしているのか。わかるようでわからない。彼は妙に隙が多い人間であることはずっと前から知っているから。
すぐに探そうと教室を出て、食堂や購買を回っていくが、見当たらない。


こういう時は、多分。


窓から見える屋上を見つめて、骸は階段を上った。確証はないが、確信はしていた。彼の行動パターンなど全て読んでいると自負出来るほどだ。
あまり音を立てぬよう屋上に入れば、案の定少し影になった場所に彼は寝息を立てていた。


「さぼる気満々ですね」


いつもならすぐに起こしてご飯でも食べさせるのだが、今日はなんだか忍びないと思い、彼の隣りに腰かける。さわさわと気持ちのいい風が頬を撫でる。無防備な寝顔を見つめて、骸は微笑んだ。


「まさか彼と同じ高校に入れるとは」


幼い頃から彼は運動も学力もダメダメで、常に骸を頼って生きてきた。
だけど、それも高校に上がる時になれば話は別だ。学力と成績が違い過ぎる二人は、もちろん狙う高校のレベルも変わる。
この高校は、骸が狙う中で一番レベルの低い学校ではあったが、綱吉なんかが受験できるレベル所でもなかった。
それでも彼は受験し、しかも合格した。


「だけど、これじゃあすぐに最下位になりますよ」


入ってからが一番苦労する所だ。案の定毎回毎回四苦八苦しながら授業を聞いている彼に骸は横目で見守ることしか出来ない。それでも未だに綱吉は弱音を吐かない。
それが嬉しくもあり、淋しくもある。


「君はもう、僕を必要としてくれないんですかね?」


中学までは何から何まで彼に頼り、自ら骸の所まで寄って、傍にいた。
だけど、高校に入ってからはそれが少なくなった。わからない所があっても、出来る限り自分自身で解くし、何かあってもすぐには頼らなくなった。
日常だったことが変わり、何かが欠けてしまったように、つまらない。
骸は彼の頬に触れて、目を細める。そして、一つ息をついて、彼も眠りについたのだった。





 
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