[遙か]淡恋-あわこい-
□素顔のままで (泰望)
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その丘を登りきると、眼下は一面の・・・・・原っぱだった。
望美は内心すごい期待していた。
平泉に移ってから初めての春。
この地の春は長年過ごした鎌倉ともこの世界の京とも違い、訪ないは遅く去るのは早いと聞いていたから、相応の景色が眺められると思っていた。
それに、後ろに控えている眉間皺次郎が、初めて一緒に出かけてくれた場所だから。
「・・・・・、葉っぱ伸び放題ですね」
「そうだな」
会話が続かない。
右を向いても左を向いても、見えるのは萌える緑・緑・緑。
花が全くないわけじゃないけれど、こうわさっと「きゃあ、素敵」なシチュエーションを期待していた。
「泰衡さん、ここなんですか?」
「ああ、そうだ。何をしている下に降りるぞ」
「ほんとに?」
「あなたが春を見たいと言ったのだろう」