[アンジェ]スウィートLover
□親愛なるオーギュスト(ニクス)
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この手紙を残し、再びあなたの前から立ち去る私を許しください。
私には遠い昔、あなたに別れを告げた日を再現する勇気もありません。
あなたは私の長く孤独だった人生の中で、初めて手に入れた光でした。
社交的なあなたは常にサロンの話題の中心だった。
それなのに、他人と接することを躊躇う私を振り回し、私はどこへ行くにも供をさせられました。
今さらですが、当時の私の胸の内を語ると、あなたが差し延べる優しさが正直嫌でした。
あなたと共に年月を重ねるたび、あなたと共に老いることができない身体を呪ってしまうからです。
エレボスの力で命を繋ぎ止めてしまった私の卑しさを呪ってしまうからです。
けれど、そんな話もあなたは一笑して、また私を野掛けに連れていくのでしょう。
そして、あの丘の別荘で私の思い出の曲を弾くことを強要し、あなたの綴る不器用な恋物語を何度も聞かされることでしょう。
その後、物語の主人公と亡国の姫君はどうなったのでしょうか。
そうそうアンジェリークの学友であるあなたのハンナ嬢は、かの姫君の生き写しかと目を疑いましたよ。
あの物語はハッピーエンドを迎えることができたのですね。
オーギュスト、私の親愛なる友よ。
私は行かねばなりません。
私ごとき卑小な命のために、今でも多大な犠牲が出ています。
私は私の運命に決着をつけねばなりません。
いつでも誠実でありつづけたあなたの友を名乗るならば、私も過ちを正さねばなりません。
不遇の身となってから、悲嘆にくれることで私という人格を守ってきました。
しかし、この長く終わりのない苦しみからも解き放たれる時が来ようとしています。
私の運命は女王の卵に託してあります。
彼女ならば必ずエレボスと同化した私を、私の浅ましい願いを、打ち砕いてくれるでしょう。
オーギュスト、あなたに会えて本当によかった。
あなたがいつまでも変わりなく過ごしていけること祈っています。
明日にはアルカディアの平和と女王の誕生を祝うことができるのですから。
さようなら、オーギュスト。
あなたのことは忘れません。
時が巡りまた逢うことができたなら、昔のようにあなたが付けた古い名で呼んでください。
どうかお元気で。
遥かなる友より