scarlet contract.

□01
1ページ/3ページ

真っ暗な夜は、
出るんだよ?


真っ赤な 真っ赤な
悪魔 が……。



scarlet contract



此処、枸瀬神(クゼガミ)
副都心として栄える街
そこの伝統ある私立高校、黒籠(クロカゴ)学園に通う普通の男子生徒
それが俺、池谷 ツバル(イケヤ ツバル)だ

否、だった筈だ。
あの事件があるまでは……




number,1/一期の運命






「な、何なんだよ!?」

真夜中の静けさを壊す ギイイィィィという耳障りな音
走っても、走っても、この音と化け物から逃げられない

全身を覆う黒い毛
獲物を狙う目
口からは、鋭い牙
ギイイィィィという高く耳を劈く咆哮


「……嘘だっ!これは、夢なんだ…。覚めろっ。覚めろよ!!」

一人、念ずるように叫ぶが、何も変わりはしない



――まさか、あの噂は本当なのか?

青年の脳裏に、友人から聞いた話が浮かぶ



――枸瀬神ってな。昔から、「零」っていう、"バケモノ"が、出るらしいぜ
で、なんでも人間の命を喰うらしいんだよ!しかも、真っ暗な月夜に出る……とか―――

話を聞いた時は、安っぽい噂話だと笑っていた
しかし、……

これが、その"バケモノ"?



「ハッ…ハッ…。って、クソ!!行き止まりかよ」

必死に走っていたが、辿り着いた先は、行き止まり
壁に背中が、当たる
目の前には、"バケモノ"


俺は、死ぬ、のか?

怖い、恐い、こわい
全身を支配する恐怖

死にたくない死にたくない


「……死にたくねぇ。死にたくねぇぇぇー!!」


俺の言葉と同時に、"バケモノ"の腕が、俺を殺すために、振り下ろされた
覚悟、するしかないのか?


きつく目を瞑る


その時、
ガキィィンという金属と、金属が勢い良く触れ合う時のような音がした

自分に、痛み、衝撃などは感じない
恐る恐る、目をあける

その視線の先には、
薄紫色の着物を着た、着物と同じ薄紫色の長髪の男が立っていた……







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ