** 同じとこに開けたピアス **


民宿『炎』でのある日の出来事。

その日の葉は何故だかハオの横顔に強く惹かれていた。
そうは言っても見ているのは顔ではない。
ハオの長い黒髪の間から見え隠れする、赤い小さなピアスを見ていたのだ。

「ん?どうした?」

本を読んでいたハオが、葉の視線に気付く。

「それ、痛くねえのかなって」
葉が指差す赤いピアス。

「ああ、コレかい?」
ハオは耳たぶに触れながら答えた。

「もうピアスホールが出来てるし、開ける時も一瞬だから葉が思ってるほど痛くないよ」
「ふ〜ん…」

説明しても興味津々で、葉はピアスから目を放さない。
ハオはクスッと笑って言った。

「葉も開けてみるかい?ピアスホール」
「うぇえ!?やだやだ!痛いだろ!」
「痛くないって言っただろう?僕が信じられない?」

よく考えてみればこの兄を信じられる部分なんてどこにもない。
けれど、にいちゃんっ子な葉はそう言われてしまうと兄を信じてしまうのだ。

「…じゃあ、やる」


そう答えてしまったばかりに、葉はまた痛い目を見る事になる。
次の日にはハオはピアッサーを持って来た。
それを目の前にすると少し怖気づいた葉だが、ハオがこんなおいしいおもちゃを逃すハズなどない。

「やだ!やっぱ無理なんよ!!」
「開けるって言っただろう?ホラじっとしな!」

双子だというのに何故か兄の方が力が強いのは世の真理。
暴れる葉を押さえつけ、暴れると痛いぞと脅しをかける。
「あ〜〜〜〜(裏声」という葉の叫びも空しく、葉の耳たぶには両側ひとつずつのピアスホールが開いた。

初めは少し痛がるも、兄とお揃いになったのが少しだけ嬉しい葉だった。



※同じとこに開けたピアスお前のだけやけに光って見えるそんなふたりごと(RAD)




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