short story
□明けの明星
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最初、彼の仲間の目は冷たかった。
それもそうだ、私はつい先日まで、彼の命を狙っていたのだから。
それでも彼は私に対し、長年連れ添ったであろう他の仲間と変わらず接してくれた。
それを良く思わなかった仲間も、中には居たのかも知れない。
だからと言って理由はどうあれ逆らう者はなく、だんだん彼に懐柔されるように、私も仲間の輪へ溶け込んでいったように思う。
長年彼を見てきた仲間としては、それが彼なのだと納得、あるいは諦めの気持ちがあったのかも知れない。
それとも、それが彼の扱い方なのだろうか。
ため息をつきながらも彼の我儘に付き合ってやっている、といった空気を感じた。
それは消して悪い空気ではないのが心地よい。
私の目には、それが子供をあやす大人のように見え、どうも残してきたものを思い出してしまうのだった。
ちょうど、彼ぐらいの年齢だったか。
マルコが私のところへやってきたのは。
背丈は同じぐらいだが、仕草はまるで違う。
マルコは初めはずっとうつむいてばかりいる子だったが、彼は空を見るのが好きなようだ。
ただ、自分より背の高い大人に話しかける時の、見上げる首の角度は同じ。
彼との付き合いが長くなるにつれ、中身も全く違うのだと言うことに気付いた。
マルコはごく普通の少年となんら変わらない。
与えた愛情は与えられた分だけ屈託のない笑顔で返してくれた。
ところが、彼は。
圧倒的な力と長年の経験による自信からの笑顔は、少年の笑顔を見慣れた私には卑屈なものに見えた。
ちょっとやそっとの優しさでは彼はその卑屈な笑顔を崩さない。
そしてちょっとやそっとではない優しさをぶつけようものなら、
その真っ直ぐな真意に気付かなかったフリをするか、戸惑ったように、笑った。
まるで受け止め方が分からない、というように。
優しさから逃げるように笑うのだ。
私には、ひどく哀しい子供に見えた。