short story
□初詣
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猫。
思い浮かんだのはもちろん、マタムネ。
トラ縞が懐かしい。
あいつと元気にしとるかな。
…ちょっと話す相手なら、あいつでもいいんだけどな。
そう思ったか思わないかの瞬間、オイラの胸元のこたつ布団から、懐かしいトラ縞が顔を出した。
あっけにとられるオイラをよそに、のそのそと這い出て来る。
柔らかい毛がオイラの頬をかすめていった。
「は?えっ、あ…っ」
トラ縞が軽やかにこたつに上がったかと思うと、そのまま丸まる。
赤い着物の飼い主の前で。
「…なんよ、もう」
呆れた口調でそう言うが、少しばかり、嬉しくて声が震えてしまった。
気付かれてしまっただろうか。
「なんよとはご挨拶だなぁ」
拗ねた口調ながらも、嬉しそうな顔。
オイラも同じ顔をしていたんだろうか。
うぇっへっへ、と苦笑いで返した。