short story
□初詣
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「じゃあ、行ってくるから」
まだ小さい花を抱いたアンナが玄関で振り向く。
「おお、気を付けてな」
オイラが笑いかけると、アンナの向こうにいるたまおも微笑む。
軽く手を振り、初詣に行くといったアンナ達を見送った。
オイラも行こうかとも思ったが、三が日は女は色々することがあるらしい。
ヤブヘビになるのも嫌だったのであまり突っ込んだ話は聞かなかった。
玄関の扉が閉まると静まり返る家の中。
前は阿弥陀丸やまん太や竜、誰かしらが居たもんだが…。
あれから数年、いつまでもそうとは言っていられない。
…でも、阿弥陀丸ぐらいは残しておいてもよかったな…。
花の持霊として受け継いだのは自分なので、文句は言えんが。
静かになった居間でこたつに入り、テレビを付ける。
オイラ自身寒くて外へ出たくないのもあったし、久々のひとりも悪いもんじゃねえかな。
年始の特番を見ながら、みかんをひとつ平らげた。
あけましておめでとうございます、とテレビから聴こえてくる中、その場に寝転んだ。
ふぅっと息を吐いても、聞こえるのはテレビの音だけ。
うーん…こういう時にちょっと話し相手が欲しいなぁ。
こたつがあるんだから、猫でも、なんでも。