It's a Wonderful World 【第一部】


□6日目-8 空虚なごっこ遊び
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** ハオ **


「迷子」と言われムッとする。
逆に言えば葉が迷子になっていたようなものじゃないか。

しかし葉はそれよりも僕の持っていたものに興味を持ったらしく、それを指差して、
「それ、ギターか?」
と言った。

「アコギだよ。丁度ここにあったから…」
店の端のスペースに設けられたのは、試しに弾けるようにと用意された設備。
指で軽く弦を弾けばアコギの音が響いた。

「弾けるんか!?」

そう言われて顔を上げれば、何やらキラキラした目の葉。

「あ、ああ…たまにペヨーテがやってるのを見てたからね」

葉の顔がだんだん明るくなり、まるで僕が何を始めるのか心待ちにしていると言った様子だ。

「い、一曲!」
人差し指を立て、葉が僕に言い放つ。

ギターなんて弾くのはいつぶりか分からない。
まだペヨーテが、僕のことを信じていてくれた時の話。

少しうつむくけれど、僕の指は弦を弾き始めた。
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