ハジメテノオト 【前編】


□第6廻 歌
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** ハオ **


そいつは少し頬を染めて怒るような、驚いたような顔をした。
ざまぁ。
もう一度心の中で呟いた。

「何よ“ざまぁ”ってー!!」

ちゃんとそこまで分かっててびっくりだ。
声出してるわけでもないのに。
まるで心が読めるみたいに。
会話とも言えない会話に、自分の心が通じた事に、口元が少し緩むのを感じた。

そして僕は、右手の人差し指を立ててそいつの前に出した。
そいつは小首を傾げてこっちを見ている。
でも大方の意味は分かっていそう。
だって、頬が紅潮していってるのがわかる。
さっきよりちょっと怒ってる?
かわいくねーな。

「も…もう一回?」
僕は首を縦に振る。
そして、書く気はなかったのだけど、メモ帳とペンを手に取り、
“それでチャラにしてやるよ”
と書いた。

「それでチャラって何よ!貸しがあるみたいに!」

慌てる先輩を尻目に、クスクス笑う。
歌えるもんなら歌ってみろよ。
そういった意味も含めて。
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