ハジメテノオト 【前編】


□第6廻 歌
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** ティファ **


「また、会えたね」
私はそう笑うも、久々に会った彼は、あからさまに苦い顔をしていた。
“またお前か”なんてクールな顔じゃなくて。
“またお前かよ…”といった感じ。

「悪かったわね、また私で」

苦笑しながら言う。
猫は私を覚えてくれていたらしく、足元にすり寄って来る。
「覚えてくれてたの?可愛いねぇ。ご主人様とは大違い」

はぁ。とため息の音が聞こえた。
「今日は弟君のお迎えでしょ?弟君は?」
そう聞くと、彼は少し驚いた顔をした後、“アイツしゃべったな”という顔をしていた。
「ずっとここで待ってるの?携帯とかは?」
彼は両腕を広げた。
「ああ、持ってない…」
そこまで言うと首を横に振られた。
「忘れたの」
弱々しく首を縦に振った。
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