ハジメテノオト 【前編】


□第6廻 歌
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** ハオ **


「今日はいつも通りに終わるんよ」
「屋上は放課後人いないってまん太が言ってたぞ」
「そういや今日はアイス半額の日だから、オイラのも買ってきといてな」
朝、葉はまくし立てる様に言い去った。

無言の「迎えに来いよ」コールなのか。
仕方ないので、いつものスーパーでいつものアイスを買って、いつもの様に学校に忍び込んだ。
マタムネとじゃれ合いながらアイスを食べて待つ。

ところが、放課のチャイムが鳴っても葉は来ない。
あいにく連絡手段はない。
携帯は忘れてきたし、S.O.Fはどこかへ散歩に出ている。
探しに行くのも面倒くさい。

微妙に肌を焼く陽を感じながら、葉の分にと買ったアイスに手を伸ばす。
自業自得。
僕を待たせるのが悪い。

やや溶けかかったソーダ味のそれを食べながら、屋上に寝そべる。
梅雨の間のわずかな陽の光がまぶしい。


アイス2本目を食べ終わると、屋上の出入り口の扉が開く音がした。
遅い。
ため息混じりに起き上がる。

「やっぱりいた!」


葉にハメられた。
何となくそう思った。
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