骸雲小説2
□椿の花
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「雲雀君」
顔が近付いた時、隙を見て素早く唇を重ねた。
優しく唇を食んで、微笑みかければ頬を両手で挟まれて思い切り引き寄せられた。
「雲雀君、ちょっと何を」
じっと見つめられる黒い瞳に、あらぬ期待をかけてドキドキと胸の鼓動が高まる。
「ねえ、骸…」
頬に添えた手を滑らせて優しく微笑む。
「…初詣行きたい」
雲雀君が言葉を発してから僕はそのまましばらく思考が停止して、馬鹿みたいに口を開けたまま雲雀君を見つめていた。
そしてその言葉を理解した途端、顔に熱が集まった。
何を期待したんでしょう、僕は。
「…行きましょうか」
か細い声で答えれば雲雀君がクス、と笑った。
「キスされるかと思った?」
はい。
正直、そう思いました。そう言ってしまいたくなるのをぐっと堪えて、ほとんどないに等しい意地を張る。
「別に、そんなこと」
その言葉を言い終わらないうちに唇を塞がれた。
押し付けるだけの軽いキスなのに僕の顔の温度はどんどん上昇していく。
ふ、と息を吐くと雲雀君が唇をぺろりと舐めて僕を突き飛ばした。
「さっきの思わせぶりな態度の仕返し。僕はおあずけされるのが嫌いなんだ」
そう言ってふん、と僕から顔を背けて玄関の方へ袖を翻して歩き去る。
ああ、今年も彼には叶わないな、と頭の隅でぼんやりと思いながら立ち上がった。
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