骸雲小説2
□眠れないのは
3ページ/4ページ
厚手のジャージをパジャマの上から着込んで、財布と携帯電話を無造作にポケットに突っ込んで家を出る。
そっとドアを開けて外に出て息を吐くと息が白くかたどられた。
ふと空を見上げると、澄んだ冬の空気のせいで星座がくっきりと浮かび上がっている。
しばらくそのまたたきに目を凝らして立ち尽くした。
チカチカと不規則な光があちこちから僕の目に入ってきて目の奥で弾けた。
あんなに近く見える星座は何億光年とかっていう気の遠くなるような時間を超えた向こう側にある。
でも僕は星が欲しいなんて思わない。
どんなに頑張ったところで届かないものには興味がないんだ。
冷えた体を温めようと、少し小走りに歩きだす。
この時間になると、車道を走る車もめっきり減るから、信号を何個か飛ばしても平気になる。
いつもこうならいいのに、とくだらないことを考えて、家の近くの公園へと足を運んだ。
がらんとした公園の自販機で温かいココアを買って、ブランコに座ると微かに冷たい風が頬を掠めて行った。
手の中のココアを転がして手のひらを温める。
どんなに違うことを考えようとしても頭の中に浮かぶのはたった一人のことばかりで。
「むくろ…」
何度目になるか解らないため息をついた。
ポケットの携帯電話を取り出して味気のないディスプレイを眺める。
いっそのこと謝ってしまおうか。
でも、どうやって謝ればいいのか僕にはわからない。
「雲雀君?」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げると、目の前に買い物袋を持った骸が立っていた。
「骸?」
手を伸ばして僕の頬に温かい手を押し付ける人は間違いなく骸で。
思わず涙が零れそうになった。すごく、安心して。
「こんなに体を冷やして何してるんですか」
骸は着けていたマフラーを脱いでブランコの上で小さくなっている僕の首にくるくると器用に巻き付けた。
さっきまで骸の首元にあったせいで、暖かいマフラーがすごく心地いい。
.