骸雲小説2
□風船ガム
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隣の雲雀君の口からは大きな薄紫色の風船が膨らんでいる。
それがパチンと弾けてしぼむと、器用に唇に付いた粘着物を舐め取って、口の中で一つにまとめてまた膨らませる。
神経質そうな顔持ちで、無心に風船ガムを食べる雲雀君はなんだか滑稽だった。
「今度は何味ですか」
「…ぶどう?」
机に散らばったカラフルな菓子の包み紙を見やる。
チョコレート、キャンディーなどの王道の甘い菓子から、煎餅やポテトチップスなどのしょっぱい物まで種類はたくさんあった。
呆れ顔で雲雀君を見ると丁度、さっきまで噛んでいた味気のなくなった風船ガムを銀紙に吐き出すと次のガムを噛もうとパッケージに手を伸ばしていた。
「もう駄目です」
その手が届く前に、僕の手がパッケージを机の上から奪い取る。
「何するの」
くるりと僕の方へ顔を向けて睨んだ雲雀君からはピリッとした電気のようなものが一瞬放たされた気がした。
「食べ過ぎですよ」
そう言ってぺちん、とおでこを指で弾けば不機嫌な顔がよけいに険しくなった。
心なしか口許が拗ねたように歪んでいる。
「やっぱり禁煙ってストレスたまるんですか」
「当たり前でしょ」
返して、と僕の手をつかんで風船ガムを取り返そうと身を乗り出す。
僕は左手を座った雲雀君には届かない位置まで高く掲げた。
案の定むっと顔をしかめた雲雀君を見て僕はクス、と笑みを漏らした。
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