骸雲小説2
□金のなる木の育て方
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綺麗な花を咲かせましょう。
君と一緒に。
金のなる木の育て方
「雲雀君、何してるんですか?」
「んー」
ソファーに座って何やら夢中になっている雲雀君に後ろから声をかければ、適当な返事が返ってきた。
ちょっとムッとして雲雀君の首に手を滑らせて肩に顔を乗せて手元を見た。
「何ですか、これ?」
雲雀君は小さな植木鉢に生えた緑の葉をそっと撫でていた。
「金のなる木」
「…クフフ、ご冗談を」
思わず笑えば、至近距離の雲雀君がクルッと振り向き、僕を睨んだ。
「ホントだもん」
詳しく聞けば、買い物に出掛けた商店街の小さな八百屋の片隅で売っていたこの苗を見つけて、雲雀君が買ったらしい。
それを雲雀君は本気で信じているのだ。
僕は雲雀君みたいに純粋ではないので、金のなる木なんて信じません。
でも慈しむように葉を撫でる雲雀君が可愛らしくて、口許が緩む。
「骸、触っちゃだめだよ」
「はいはい」
大きな木をゴトン、と窓際に置いた雲雀君は嬉しそうに眺めた。
愛想がないように見えるのは、ただの照れ隠しで、実は金のなる木を信じてしまうくらいとても純粋で。
そんな雲雀君が僕は大好きなんです。
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