骸雲小説2
□木曜日、八時
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そしてまた、今日こそは宿題を、と意気込んで来た僕に絶望的な一言。
「宿題、捨てちゃった」
あの厚っこいプリントの束を、ですか。
もうどこをどう突っ込んだらいいのかもわからない。
「骸」
「なんですか…」
ため息混じりに返事をしたら、にやりと雲雀君が笑った。
「うそ。今日はやった」
ちょっと誇らしそうな顔でそう言って雲雀君は机にプリントをトン、と置く。
「偉いでしょ、褒めなよ」
命令ですか、と皮肉の一つも言いたい所ですが、正直本気で驚きました。
「偉いです、雲雀君!やっぱり君は本当は頭がいいんですね!」
思いっきり褒めてやれば、頬を赤くして嬉しそうに笑う雲雀君。
あ、可愛い。
なんて子供嫌いのはずの僕が思ってしまったのはきっと雲雀君のペースにのまれてしまったからかもしれない。
「骸って恋人いるの?」
「いませんよ。僕、モテませんし」
僕が通うのは金持ち私立大学だから、通うのはみんな玉の輿狙いのつまらない女とか、金持ちの御曹司とか、そんな奴等ばっかりですから。
地味なメガネの苦学生なんて、気にもかけませんよ。
「ふーん…大学ってそんなに見る目ない人ばっかなんだ」
その声にふと顔を上げれば、じっと僕を真剣な目で見つめる雲雀君。
「雲雀君?」
「僕は君のこと、すきだけどな」
カツン、と空のコーヒーカップの底にスプーンが落ちた音が、やけに部屋に響いた。
前言撤回。
僕、可愛い子供は好きみたいです。
にへっと笑ってコーヒーのおかわりを差し出す雲雀君を見ながら、ぼんやり思った。
Fin.