骸雲小説2

□木曜日、八時
2ページ/3ページ


いつも不機嫌な顔の中学生は。


僕の可愛い生徒。



木曜日、八時



「こんばんは、雲雀君」


「早いよ、まだご飯食べ終わってない」


口の周りにご飯粒をつけて、何やらもごもごと咀嚼しながら僕を睨み付ける。


「早くしてください、授業始めちゃいますよ」


トントン、と鞄から出したプリントの束を揃えると机に並べる。

僕はこの可愛くない子供…雲雀恭弥の家庭教師なのだ。


「ふん」


不機嫌そうに顔をしかめて残りのおかずを詰め込む雲雀君は、中学生。

僕は、貧乏大学生だからとりあえず収入のいい家庭教師をやっているだけで。

子供は正直嫌いです。


「今日は国語ですか。雲雀君、宿題やっておきましたか?」


カリキュラム表を見て、とりあえず商売だから仕方ない、と愛想笑い。


「やってない」


箸を置いて机に突っ伏したかと思ったら、腕の隙間から黒い目をのぞかせ、悪びれもせずに言い放つ。


「またですか」


思わず不機嫌な声が漏れた。

雲雀君は今まで一度も宿題をやって来た事はない。

なぜだか問い詰めても、いつも答えは返ってこない。


「骸、コーヒーいる?」


雲雀君が鋭い目を一転させ、くるっとした笑みを浮かべる。

これが雲雀君ペースで、大抵僕はこれに引っ掛かってしまう。

コーヒーをいれてくれた雲雀君は、机に座って頬杖をついて、僕に次から次へと矢継ぎ早の質問を浴びせる。


「ねぇ、大学楽しい?」


とか他愛もない質問。

よく何個も思い付くもんだ、と時々感心しますよ。

でもそれに一々丁寧に答えている僕もどうかと思いますが。

そして気付けば一時間が過ぎて、


「じゃ、また来週」


と追い出される。

全く、理不尽な生徒です。

成績が上がらないと、会社の方から怒られるのは僕なのに。





.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ