骸雲小説
□五回目のプロポーズ
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T嘘つき
風邪をこじらせて倒れた、と聞いて慌てて病院に駆けつけた。
ベッドの上の雲雀君の顔は真っ青で、息を吐く度に胸が苦しそうに上下していて。
本当に死んでしまうんじゃないかと思いました。
「雲雀君、雲雀君」
一晩中、必死に雲雀君の熱い手を握って、声が枯れるほど何度も泣きそうな声で雲雀君の名前を呼びました。
だから明け方、僕の呼び掛けにぴくりと微かに開かれた目を見た時には、思わず涙がこぼれました。
「雲雀君、まったく貴方は…本当にどうしようもない馬鹿です!」
ベッドに横たわったままの華奢な体を抱き寄せれば、普段よりも熱い雲雀君の体温が心地よくて、愛しくて、強く抱き締めた。
だって本当に信じられないくらい真っ白だったんですよ、雲雀君の顔。
「…何なの、君」
それなのにそう言って雲雀君は僕の胸を強く突いた。
あんまりです、雲雀君。
僕がどれだけ心配したかわかっているんですか。
どれだけ泣きそうだったと思ってるんですか。
「君、誰?誰の許可を取ってこの病室に入って来てるんだい?」
「何言ってるんですか、雲雀君…」
君が言うと冗談に聞こえないんですよ。
くだらない冗談なんかやめて、早く。
早くキスをしましょう。
「離して」
少し怒気を含んだ言い方に、雲雀君の肩に埋めていた顔を上げれば突き刺さるような鋭い視線。
「ひば…」
「誰だか知らないけど、僕に触らないで」
雲雀君の瞳は冗談を言っているようには見えなくて。
信じたくない強い拒絶の言葉に一瞬息を止めました。
…風邪をこじらせただけだって、言ったじゃないですか。
嘘つき。