小説

□面影U
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「おいトシ、総悟のヤツすっかり拗ねてんぞ。」



「はぁ?あいつがそんなたまかよ?」


「だってよう、こないだからお前総悟にだけやけに冷たくねぇ?」


「そりゃ元々だろ?」




みんな出払った屯所に珍しくトシと俺の二人きり



「なぁ、よかったら話してくんねぇか?」



「別になにもねぇよ。」



手に持ったままの煙草の灰がポトリと落ちた



「ミツバ殿が亡くなってからあいつも寂しいんだよ。お前につっかかることで少しでも気持ちを紛らせてんじゃねぇか?」


「迷惑だ。」







「そうは言ってもあいつにとってミツバ殿は特別で………」




「当たりめぇだろ?」


「えっ?」





「ひとが一人死んだんだ。
どんなに思っても、もう二度とその人の笑顔には会えねぇ。
泣こうが拗ねようが戻ってこねぇもんは戻ってこねぇんだよ!」


「トシ、お前………






泣いてんのか?」




「ばっ誰が!ぶっ殺されてぇか!」




席を立とうとするトシの腕を捕まえて引き留めるが顔は背けたまま。




「トシ、なんでそう総悟を嫌う?元々喧嘩ばかりしてたお前たちだが、ミツバ殿がこんなことになって、あいつの痛みはお前が1番わかってやれるんじゃねぇのか?」




「あいつの顔なんか見たくもねぇんだよ!離せよ!」



俺の腕を振り払うとトシは部屋に籠っちまった。











総悟だって本当はお前がミツバ殿と一緒になってたら、ミツバ殿もどんなに幸せだっただろうって




そしたらあいつも素直にお前に甘えられたのにな









「ただいま帰りやした。」




「おう、総悟か。」


………!






そうか、そういうことかトシ



だから総悟の顔を見たくないのか


どこまで不器用なやつなんだ?










「あれ?近藤さん何泣いてるんですかィ?」


「ばかやろー!玉ねぎが目にしみたんだよ!」



「玉ねぎって………それバナナ……」



「るせぇ!」










なぁ総悟、もう少し待ってやってくれ。



あいつにはあいつの時間が必要なんだよ。



口に出せない分、あいつの悲しみは身内に降り積もるばかりで、それを溶かすにゃちぃとばかり他の人間より時間がかかるんだ





なあ、総悟…………。










fin.
 

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