小説
□和道一文字
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「ゾロ!刀貸して!」
「ほらよ、あんまり乱暴に扱うんじゃねぇぞ!」
「ありがと。」
「おう。」
「ねぇゾロ」
「なんだ?」
続きを言わないナミに改めて向き直る。
「なんだ?」
「いつも私が刀貸してって言ってもソレだけは貸してくれないわね。」
「あ?これか?」
ゾロは肌身離さぬ腰のひと振りに手をやる。
「そんなに大事な刀なの?」
「まあな。」
「ふぅん。」
今のやり取りだけで納得したのかナミは船室に入って行った。
海はいつの間にか凪いで心地よい揺れは揺りかごのように剣士をも束の間の微睡みにいざなう
「ゾロ……ゾロ、起きて。」
「……くいな………?」
なんでこんなとこに居るんだ?
そうか、夢か………
「久しぶりだな、くいな。」
「うん、ゾロ元気そうで安心した。少しは強くなった?」
「ああ、毎日稽古は欠かしゃしねぇさ。」
「うん。でもね、ゾロ…………」
くいなは心なしか視線を落として口ごもる。
「あ?なんだ?」
甲板に腰を下ろして船室の壁に寄りかかる俺の前に立つと、頭ひとつ分俺を見下ろすくいながその姿に似合わぬ大人びた口調で話しはじめた。
「ゾロ、世界一の剣豪になるって約束したけど、もしもゾロが他の生き方を見つけたら、その時は私との約束なんて、誓いなんて忘れていいのよ。」
「何言ってんだよ!」
「その刀…………そんなに大事にしなくてもいいよ。ゾロはゾロの夢を見つけて生きていけばいいんだから。」
「くいな………」
もう夢か現実かわからない。
こんなリアルな夢があるもんなのか?
「ゾロ………あんたと一緒に大人になりたかった………」
くいなは寂しそうに笑う
「ごめんね、サヨナラも言わないで。」
くるりと振り向いた背中が少しずつ小さくなっていく
「待て、くいな!
くいな!
行くな!ここにいろ!」
「ゾロ、こんなとこで寝てたら風邪引くわよ………」
「ナミ、寝かせといてやれ。」
「ルフィ?」
眠る剣士に目深に被せた麦わら帽子の理由を知るのは空飛ぶカモメと潮風だけでいい
fin
→あとがき&蛇足