逃水の宴
□相反する五題
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・泣かないからって辛くないわけじゃない
きょうもあのこは、たびにでる。まっしろなちずを うめるために。
そしてかえってきたら、ぼくにはなしをきかせてくれる。
ぼくはそれが すごくたのしみで、けれどすこしふあん。
「ドラゴンを倒してきたんだ」
「今日も宝石泥棒にしてやられたよ」
「…愛することって、難しいね」
こえはふかく、ふかく、しずんで。
ねぇ、ないちゃえば。ここにはぼくしかいないんだから。ぼく、くちはかたいほうなんだから。くちに ちくちくはないけど。
「ドラゴンキラーって、大罪だったんだなぁ」
「涙って、どうすれば流せるんだろう」
「…どうしてひとは、種族の違いで判断するんだろう」
ないちゃって、いいのよ。まま、むねをかしてあげる。あ、ぼくのむね ちくちくでした。
「自分の歩んできた道は、正しかったのだろうか」
そんなむずかしいこと さぼてんにいわれても、わからないけど。
つらいなら、こえをあげて ないていいんだよ。
ぼくがそばにいてあげるから。
END.