逃水の宴

□サイト一周年企画
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[[ペット牧場へ-センカ]]


胸いっぱいに溢れる、行き場の無い「好き」って気持ち。


「一年って、短かったね」

「…ああ」

「でも、長かったよね」

「どっちだ」

「んー、いろんな事がいっぱいあって、短かったけど長かった」

「お前、いつも思うが、その答えは卑怯だぞ」


うん、自分でも思うよ。言ったら、分かってるなら直せと怒られた。
言われてすぐ直る様なら良いんだけどね。もう癖みたいなものになってるし。

寝転がっていた草原から身を起こし、隣にまだ身を横たえたままの瑠璃の顔を覗き込む。

陶器の様な、滑らかな肌が綺麗だ。


「…センカ」
「ん?」


暫く眺めていたら、相手の方から接触してきた。
驚いている間に掠め取られたような口付け。


「瑠璃もさ、こーいうことフツーにやるようになったよね」
「………」


けれど羞恥にか赤く染まった頬を撫でると、ぴくりと震える瞼。至近距離だから、それがよく見える。

出会いから、どれだけの時間が経っただろう。想いを告げてからどれだけの季節が過ぎて行っただろう。
お互いの気持が同調して、一年。


「…瑠璃って、最初俺の事嫌いだったでしょ」
「気付いてたのか」
「……そこは謝ったり項垂れたりする所じゃない?」


あまりにもしれっとした顔のまま言われたから、俺の方が閉口した。
すると瑠璃は、笑って言うのだ。綺麗に、笑って。


「"今"はそんな気持ぜんぜん無いからな」
「過去は笑って話せるってこと?」
「……時と場合による」


そこで口を噤むものだから、俺も思い当たることは無いはずなのに妙に緊張した。
それから何だか可笑しくて、声を上げて笑った。


「瑠璃」
「…ああ」


その瞳に映る、春の空が綺麗だった。


「…過去も今もこれからも、ずっと愛してる」


誓いの様に、深いキスと共に、言葉を落とす。

春の匂いがくすぐったくて。彼の体温が心地好くて。
まどろみに支配されながら、俺は言った。


「…何はともあれ、さ」



「今まで有り難う。これからも宜しくね」



センカEND.
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