逃水の宴
□サイト一周年企画
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[Opening]
チラチラと床に落ちた影が躍るのが気になって、まだ重たい瞼を抉じ開け、身を起こした。
欠伸を一つ、暖かな空気に誘われて零す。
外は麗らかな春の陽気。鳥の囀りと木々のざわめきが耳に心地好い。
思わず二度(ふたたび)の夢の世界へ落ちてしまいそうになるが、階下の声に促されて立ち上がる。
「お早うございます」
「おはよー」
双子の居候の挨拶に応え、食卓に着いてぼんやり考える。
さて、今日はどうしようかと。
良い天気に、家に籠っているのも勿体無い。
空は柔らかな青が一面を覆っているし、何かに急かされている状況でも無い。
他愛ない会話を交えた朝食を終え、取りあえず外へ出てみた。
伸びをして深呼吸、春の匂いというのだろうか優しいそれが胸を満たす感覚を覚える。
「おはよ」
玄関先の草人が、そう声をかけて来た。
「今日は、どこいくの?」
「まっしろな地図の、どこを埋めるの?」
「まだまだ、どこまでも道はつづくよ」
その言葉に、背中を押されているような気がして。
一歩、踏み出していた。
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