逃水の宴
□星廻り、愛歌う
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恐る恐る振り向いたリュミヌーの目の前に……先刻まで焦がれていた彼が、甘い笑みを浮かべてそこに居た。
リュミヌーが驚いているのに、ギルバートはにっこりと笑い、どうしたんだいと首を傾げる。
リュミヌーは呆然としたまま、力無く手を伸ばした。触れた彼の頬は、確かにあたたかく。
「……まぼろしじゃ、ない」
「当たり前だよ、こんなイイ男が幻なわけあるもんか〜」
「…どうして、」
また、ひくりとリュミヌーの喉が痙攣し。目頭が熱くなってくる。涙は見せまいとリュミヌーがぎゅっと目を瞑ると、ギルバートがぽんぽんとその頭を撫でてやった。
子供にするように。幼い頃に、そうしたように。一瞬だけ、世界の縮尺が小さくなった。そこに居るのは小さなリュミヌーとギルバートだった。寂しいと泣く子供と、それをあやす子供。
「そう泣かないで〜。ボクはちゃんと此処にいるんだから〜」
「だって…っ、もう、会えないと思ってた…」
リュミヌーの言葉に、ギルバートは困ったように眉根を寄せた。苦笑を浮かべながらも、「大丈夫だよ〜」と確りと言う。
「確かにボクは、新しい恋を見付けに行くと言ったよ〜。でも、誰に会ってもまだ恋に落ちないんだ〜」
ようやく顔を上げたリュミヌーに、ギルバートがやわらかな笑みを浮かべる。
「ボクの落ち着ける場所は…キミのところなのかなぁ〜」
ギルバートの言葉は、リュミヌーの心をあたたかくした。