逃水の宴

□星廻り、愛歌う
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「…会いたいわ。ギルバート」


リュミヌーは寂しげに呟いて、視線を落とした。
パタリ、と音がして、水滴が地面を叩いた。リュミヌーは頬に手をやって気付いた。それは自分の涙だった。
意識した途端に、後から後から溢れる涙。そして今まで口にすることの無かった、本心。


「…っ会いたい……夢が違っていてもいいの…見ている世界が違っていてもいいの……どんな未来でもっ、あなたの隣にいたかった…!」


言ってはならないと思っていた。
言葉にした瞬間に、自分の弱さを自覚してしまいそうで。あの日押し止めた涙が、溢れてしまいそうで。
けれど今それが、決壊してしまった。

リュミヌーの啜り泣きが響く、夜の町。そんな闇夜の世界を照らした、乾いた拍手。
パチパチと、一人分。そしてこの空間には不似合いな、陽気な声。


「やあ、久しぶりに聞くキミの歌は、やっぱり素敵だったよ〜」


歌うように伸びた語尾は、リュミヌーのよく知る人の特徴。
リュミヌーは思わず涙を引っ込めて、息を飲んだ。けれど振り向く勇気がなくて、崩れ折れたまま。
トコトコと石畳を叩いて近付いてくる足音は、複数。


「それなのに、キミはどうしたんだい?こんな良き夜に涙は似合わないよ〜」


足音はリュミヌーの真後ろで止まった。
未だ硬直したままのリュミヌーの頭を、優しい何かが撫でた。


「こっちを向いてよ……リュミヌー」
 
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