逃水の宴

□恋するしずく
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「チョコレートを渡して、どうするの?」
「渡すのと一緒に、告白するのよ」
「……こ、くはく…」

つまり、バレンタインデーっていうのは、告白する口実がある日ってこと?チョコレートが告白のついでなのかしら、告白がチョコレートのついでなのかしら。
わたしの頭の中でぐるぐると回る思考。けれど、これはどれだけ考えたって答えなんて出ないっていうのは分かってる。
とにかく、チョコレートを作ればいいのよね?

「エメロードさんは、だれかにわたすの?」
「あたし? えー…うーん、どうしようかなー」
「こくはくするんですか?」
「告白?それはしないけど」
「??」

どういうことかしら。チョコレートを渡して、告白するんじゃないの?
再び疑問符を浮かべていると、エメロードさんが「ああ」と声を上げた。そしてまた、さっきの分厚い本を開いて。

「好きな人にチョコを渡して告白ってだけじゃないのよ。
 恋人同士は愛を確かめるために、あと友達同士であげるっていうのもあるの。
 本当に好きな人は本命で、別にそうじゃ無い人には義理っていうのをね」
「ほんめい……ぎり……」
「だからあたしは、渡すなら義理チョコね。都市のみんなに配ろうかしら」
「みんなに?」
「せっかくならみんなで楽しみたいじゃない!」

楽しいこと好きのエメロードさんらしい言葉。わたしも思わず表情を緩めてしまう。
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