影歩き
□相思華
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暑くて、寧ろ熱くて。汗が出るほどなのに、体は冷たくなっていく。
(――なんで、)
ああ、血が。崩れ落ちた体は、血溜まりの中に倒れて。
それは己のもので。しかも大量の。
「…氷華っ!」
己を呼ぶ声が聞こえた。聞こえたが、返事をする気力が湧かなかった。顔を向けることさえも、億劫で。
「死ぬな…!」
死なない。死なないから。そんなに騒ぐな。
動かない唇で、そう云った。
短剣を握る力も無く、目の前も霞んで来た。
「死ぬな、氷華!――氷華!!」
死なないから。瑠璃、お前は心配しすぎだ。俺は大丈夫、だから。
少し休ませてくれ。目を、閉じるだけだから。