逃水の宴

□木漏れ日ひかりて
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「しおんー!」
「!」

ばさっ。背後からの急襲に、詩音は珍しく驚いて慌てて振り向く。目が合った蓮華は、にやりと口の端を上げる、いつもの彼女の表情を浮かべていた。

「蓮華…挨拶代わりにスカート捲るの、やめてくれる?」
「ごめんごめーん、あんまりにも可愛い後ろ姿だったから☆」
「………」

けれど本気で彼女に怒ることも出来ず、詩音は疲れたような息を吐いて後ろで押さえていたスカートを整え直す。
笑顔のままそれを見ていた蓮華が、ことりと首を傾げた。彼女の、無造作に束ねられた金髪がさらりと肩を滑る。

「何してたの?ぼんやり窓なんて見て。なんか面白い物あった?」

そう訊きながら、蓮華は詩音の隣に並んで背伸びして外をのぞく。けれど詩音は、ふるふると首を横に振って「違う」と言った。

「下じゃなくて、上」
「上?上って何が……」

詩音の言葉に視線を巡らせ、やがて彼女の目が捉えたのは―――。

「……あいつら、何やってんの?」

一階上の窓枠に頬杖を付いたセンカと、その隣で一緒に外を眺めている風璃の姿。
蓮華は呆れたようにそう言った。詩音が今度は下を指す。

「たぶん、一欠を見てるんだと思う」
「一欠?って、……ああ、あんなとこで何やってる…ってのは愚問かしらね」
 
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