逃水の宴

□木漏れ日ひかりて
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明らかに胡散臭げな視線を、どうせ届かない一欠に向ける。遠く小さく見える一欠の様子は、此方からも詳しくは分からない。
ただ、向かいに立っていた女子の方が先に駆け足でその場を後にする。

「で、何で「あーあ」なの?」
「別にー。女の子の方、可哀想だなぁって」
「なんで?センカだって、フるじゃん」
「俺は、瑠璃が居るからっていう理由があるもん。一欠なんて「面倒くさいから」とかいう適当な言い訳しか無いでしょ」
「うーん…確かに、そうかもね」
「振られるにしても、正当な理由くらいは欲しいよね」
「まぁ、そうだね」

二人は一欠を見詰めたまま、勝手にそんなことを言う。
やがて一欠の方も、ゆっくりと歩き出した。此方に向かって、気だるそうに歩き――。

「あ。」
「え?」

ふと、三人の視線が合う。
一欠は、無表情で。風璃は、瞬いて。センカは、にやりと笑って。

「……目、合ったね」
「うん」
「……若しかして、最初からバレてた?」
「さぁ?でも一欠、気配とか敏いから」
「…センカも知ってて?」
「勿論」

うわぁ、嫌がらせ過ぎる…。にっこりと笑うセンカを見て、風璃は乾いた笑い声を上げるしか無かった。



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