影歩き

□ひとの狭間
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彼は震えていた。
歓喜に恐怖に興奮に。
背に背負った、使いもしない長刀がまるで意思を持っているかのようにその柄を鳴らす。


「――新月」

溜め息になりかける息を押さえ、低く呼ぶ。
今にも勝手に飛び出しそうな(そんな事はあり得ないのだが)長刀を、なだめるかの様に。

「まだだ」

視界に映すは万物の根源となる絶対領域。


「まだ、来ない」

時は未だ満ちず。



  
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