逃水の宴

□08ハロウィン企画
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[[友愛の都市]]



「とりっくおあとりーと!」
「まあまあ、いらっしゃい」


おっとりとした声とともに現れたのは、白真珠の姫です。今日はその白いドレスの背に、妖精の羽根を付けています。


「わあ、真珠のお姉ちゃん、綺麗ね!」
「バドくんもコロナちゃんも、可愛いよ」


お互いにそう言い合って、照れ笑いをします。


「今日はね、煌きの都市でもハロウィンなの」


白真珠の妖精が言うとおり、入口から見える都市の外観はいつにも増して煌びやか。ジャック・オ・ランタンの掲げられた窓もあります。
どこからか元気な「トリック・オア・トリート」も聴こえます。


「じゃあ、真珠のお姉ちゃんはお菓子持ってるの?」
「持ってるよ。えっと、もしかして、悪戯が良かった?」


双子の考えは読まれています。
苦笑いを浮かべる双子に、内緒話をするように白真珠は声をひそめて囁きます。


「じゃあね、瑠璃くんのところに行くと良いよ。瑠璃くん、こういうの嫌いだから、きっとなんにも用意してないと思うの」


その言葉に、双子の頭上にエクスクラメーションマークが浮かびました。
良いことを聞いた、とその眼が悪戯色に染まります。

白真珠からカップケーキの入った袋包みを受け取って、双子は駈け出しました。
ラピスの騎士を目指して。そして、この今日と言う日に一色に染まった都市でめいっぱい楽しむ為に。




それから、人気のない玉石の間の陰に隠れていたラピスの騎士を見付けたのは、双子がおおいにこの日を楽しんでから。
はじめ、双子はラピスの騎士のその深緑色の頭に見慣れないものを見つけ、またたきました。


「なあ、瑠璃の兄ちゃん。それって…」
「おおかみおとこさん?」


双子の言葉に照れ臭そうに小さくうなずいた騎士に、とうとう二人はお腹を抱えて笑い転げました。


「そんなに笑うことはないだろう!」
「だ、だってっ」
「似合わなーい!」


いつまでも笑い続ける双子に、騎士ははずかしくてはずかしくて、今にも逃げ出したかったにありません。
けれど今下層に行って彼の姫にでもからかわれたら、それこそ彼はもっと恥ずかしいでしょう。


「それよりっ、言うことがあるんだろう?」


その思いもかけない騎士の言葉に、双子はびっくりして笑いを引っ込めました。
傾げる二人に、まだどこか恥ずかしそうな騎士がその言葉を待っています。


「とりっくおあ、」
「とりーと?」


だって、彼はお菓子を持っていないはずです。
そして双子はまだ悪戯を思い付いていません。

けれど、彼は握り拳を差し出しました。きょとりとする双子が伸ばした手のひらに、何かが落ちてきます。
オレンジ色の、飴玉が。


「あっ、ありがとう!」
「ありがとう、瑠璃のお兄ちゃん!」


びっくりした双子ですが、しっかりとお礼は言いました。

ラピスの騎士は、けれどまだ何か言いたげです。
また差し出された拳から、ぱらぱらと飴玉が降ってきます。


「あいつにでも、渡しておけ」


ありがとう、ともう一度双子は声を合せました。

師匠は驚くだろうか、と心弾ませながら帰路につきます。




☆ 騎士長の手作りカップケーキ と オレンジ味の飴ちゃん を ゲット した !
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